ナベツネこと渡邉恒雄氏が大嫌いという声はよく耳にしますが、その反対に、大好きという人にはあまりお目にかかったことがありません。僕自身の場合、大好きでもなければ、大嫌いってわけでもありません。どちらかと問われれば、“好き”に部類されるのかなぁ…。良くも悪くも、あれだけの存在感のある人にただただ興味があるのです。あの自信に満ちた言動の裏側には、あらゆる事柄を学習する努力が隠されています。政治はもとより、経済政策や、憲法、外交、安全保障、治安、教育、そしてプロ野球など。氏が発する言葉は確かにドギツイ面もありますが、よくよく聞いてみると的を得ているように思えます。また、この本の最終章には、本人のがん手術体験記とともに、認知症の妻をいとしむナベツネさんの意外な一面も描かれています。老いた病妻に対する想いを聞くと涙が出ます。「私にあなたが無いとしたら―ああ、それは想像もできません。想像するのも愚かです。私にはあなたがある。あなたがある。そしてあなたの内には大きな愛の世界があります」。
この本を読んで、ナベツネさんを見る目がチョッと変わりました。