だいぶ前の話になりますが、今年の宮崎キャンプ地でのことです。サンフレッチェ広島の本谷社長が、僕の方に近寄り、突然こんなことを話しかけてこられました。
「吉田さん、『そうか、もう君はいないのか』っていう本を読んだことある?」と。
突然の問いかけにアタフタしながら、「いえ、ありませんけど…」と答える僕。
すると、本谷社長は、熱くこう語り始めました。
「まぁ1度、読んでみなさい。人生観や夫婦観が変わりますから。でも、吉田さんはまだ42歳でしたっけ? もしかしたら、もっと歳を重ねてからでなきゃ、それは実感できないかもしれませんね」。
ってなことで、読ませていただきました。結論から言うと、僕のこの年齢でも十分、心に響くものがありました。夫婦愛、親子愛の素晴らしさを実感でき、とても勉強になりました。
この本は2部構成で仕上がっています。 第1部は、著者・城山三郎氏みずからが書いた奥様との出会いと死別の物語です。城山氏は、奥様のことを本当に愛しておられたんでしょう。オノロケと言っては失礼かもしれませんが、仲むつまじい夫婦が想像できて、実にほのぼのとした温かい気持ちになりました。
一方、第2部は、城山氏の娘さんが書いた、父・城山三郎との死別の物語です。愛する妻に先立たれ、慟哭の中、ボロボロになって生きていた城山さんの姿を、娘さんが書き綴っています。第1部との対比が痛ましく、だからこそ、夫婦の絆、親子の絆を強く感じることができました。
“生”あるものには、遅かれ早かれ、必ず“死”がやって来ます。“死”をどう受け止めるかによって、“生”の価値が問われるような気がしてなりません。
著書の中で、父・城山三郎の死に直面した娘さんは、こう記しています。
「よかったねぇ、お父さん。やっとお母さんの所に行けて」という言葉が、思わず口をつく。不謹慎かもしれないが、これが本心。こう思えたのも、母の死、父の死が共に私達にとって、それこそ「ありがたい」最後の「黄金の日日」だったから。
以前、僕の母が、こんなことを言ったのを思い出します。 「人間に与えられた最高の贈り物は、“死”なんよ」。
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